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親父とオフクロとオレの話。3

Posted by 友進 on 11.2012
Category : 家族
玄関を開けると2人の男が立っていた。
一人は50過ぎぐらいだったろうか、見た目はとてもヤクザになんか見えない、いたって普通のジジイだったのだが、もう一人の男がヤバかった。
たぶん30代後半ぐらいだったと思うが、髪型はパンチパーマで太っていて目つきが鋭く、服装は変な犬の絵が書いてあるポロシャツに紺色のスラックス。そう、典型的ヤクザ丸出しの容姿だった。

オレは冷静を装うも心の中で思っていた。はい、ヤクザ。ヤクザきた。極道。いや、ジャパニーズマフィア・・。いや、どっちでもいい。 どうしよう・・・。拉致られて無理矢理工事現場などで働かせてしまうのだろうか・・。どうしよう・・・。 指とか切られちゃうのかなぁ・・・。恐怖心で金玉がきゅっ~と、下っ腹の方にせりあがってきていた。

しかし終始話をしてたのは温和そうなジジイの方だった。

『さっき電話で話した者だけど、お父さんかお母さんはいるか?』
ジジイが別に怒っている素振りもなくオレに話しかけた。

「えっ、い、いや、まだ帰ってきてないですけど・・・。」
オレはオフクロに出てくるなと言ってたので、オフクロは家の奥で会話を聞いていた。

『そうか・・・、それじゃあ車で少し待たせてもらうから。帰ってきたら教えてくれるか?』
もう一人の男は何も言わず、黒目が見えるか見えないかほどの鋭い目つきで黙ったままオレを見ていた。そしてその男たち越しに後ろを見るとエンジンを掛けたままの黒塗りのベンツが止まっていた。

「わ、分かりました・・・。」
アカン・・。こいつら帰らねぇ・・。どうしよう。今さらオフクロ家に居ますなんて絶対言えない。それ以前にこんな奴らに会わせたらオフクロがヤバイ事になる。 ちくしょう、どうしよう・・・。
こういう時に限って親父は家に居なかった。 っていうか帰って来なかった。自分の都合の悪い時はどこに逃げていたのか分からないが、家に帰って来なかった。 なので借金取りが来たときの対応は全部オフクロがしていた。そういう親父だったのだ。 なので親の事は関係ないと普段思ってても、オフクロの事はオレが守らなきゃとは心のどこかで思っていた。

『あっ、それからさっき電話で話したのは僕か?』
ジジイが振り返り、思い出したようにオレに話した。

「えっ!? 電話? いや、自分さっき帰ってきたんで・・。たぶん弟のキミヒコかな~?」
アウト・・・。 即席で弟を作ってしまった・・・。 もう無理だ。 っていうかキミヒコって誰だ・・。
 
『おう、なんだ!弟もいるのかっ!まぁいいや、じゃ車にいるから頼むな!』
そう言うと2人は車に向かって行った。

玄関を閉めて家に入っていくと、オフクロが電話の受話器を持っていた。

「なんで受話器持ってんだよ。」オレが聞くと、

『大丈夫だった!?何かあったらすぐに警察に通報しようと思ってね。 ごめんね、大丈夫だった?』

「あぁ、大丈夫だよ。(全然大丈夫じゃない・・。) でもまだ外にいるから少しおとなしくしてた方がいいよ。親父かオフクロが帰ってきたら教えてくれってよ。 ったく、しつけ―よな。」

『ごめんね、もういいから。 シンヤはどこか遊びに行ってきな。後はお母さん何とかするから!』

「うるせ―よっ、平気だよ! いくらヤクザでも中学生にまで手は出さねーだろ。逆に今さら遊びになんか行ける訳ねーだろ。 大丈夫だよっ!」
冷静を装って言ったものの、心の中ではまだ(ジャパニーズマフィア・・・)と、つぶやいていた。

2、30分過ぎただろうか、ふと気付くとオフクロの姿がなかった。
ハッ、と思い部屋の中から外を覗くとオフクロが奴等と話をしていた。そしてペコペコ頭を下げていた。

オレは心配よりも先にそんな奴等に頭を下げているオフクロに腹が立ち、その場所へと走っていった。

「何してんだよっ!! 頭下げてんじゃねーよっ! オフクロがワリィ訳じゃねーだろっ!全部親父のせいだろーがっ!」

だが人が心配しているのをよそに、オフクロとそのジジイはお互い笑いながら話をしていた。

『すみません、優しい息子なんです。本当にご迷惑お掛けして・・。 それではまたこちらからお電話いたしますので・・・』
オフクロが言うと、

『あぁ、分かった。まぁ大変だと思うけど、連絡が取れないとこっちもどうしていいか分からないからな~。 親父さんにも困ったもんだな~、まぁ頑張って下さいよ! それから僕、ちょっとコッチおいで!』
その2人組のヤクザらしからぬオフクロに対する優しい対応に拍子抜けしていると、ジジイはオレを車の中に呼んだ。

「なんですか?」
悲しいかな、生まれてはじめてベンツに乗ったのがこの時だった。しかし車中を見物する余裕などはなく、バックミラー越しに運転席にいる元プロボクサーの薬師寺 保栄のような目つきの、さっきジジイと一緒にいた男と眼が合った。それがまた不安を覚えさせた。 

『ごめんな、兄ちゃん。でもな、おじさんは兄ちゃんのお父さんに貸してる物があるんだよ。でも返す返すって言って何日も返してもらえないで、そのうち電話にもでなくなってな。 兄ちゃんだって友達に物を貸して返してもらえず、そのうち連絡が取れなくなったら不安になるだろう? 別に兄ちゃんや君のお母さんが悪い訳じゃないのはしってるけどな、ただ連絡取るには電話して君やお母さんに話すしかないだろう? おじさんもな、あんな電話して悪かったとは思ってるけどな、おじさんの気持も分かってくれよな。』

期待? とは裏腹にジジイは優しくオレに説明してくれた。そして、

『ごめんな兄ちゃん、電話したの俺なんだよ。 でも兄ちゃん、いい啖呵切ってたぞ!』
薬師寺が運転席から振り返って言った。笑い顔になるとほとんど黒目が見えなくなっていた。

『でもビビらないでちゃんとお母さんを守ったのは偉かったぞ! でもウソってバレバレだったけどな!』
薬師寺が笑いながら言うと、ジジイの方が財布を取り出し『ほら、これで母ちゃんと美味いもん食ってきな。』と言って一万円をオレの手に握らせた。

「いや、いいです。」と言うと、『迷惑料だよ!いいからとっときな。』
そう言うとオレを車から降ろし2人は帰って行った。

ビビり損だったが、少しだけ温かい気持になった。

まぁ、こんな借金にまつわる話が山ほどあるのだが、話を戻すとやっとオフクロは親父と離婚できたんだ。
オレが23~4ぐらいの時だったかな? 今思うともっと早くそうするべきだったんだけど、オフクロはオレの為にずっと我慢しててくれたんだよね。
ただ離婚する時も簡単にいった訳ではなかった。
ある時オフクロがオレが一人暮らしをしていたアパートにきて言った。
『シンヤも知ってると思うけどね、お母さんもうお父さんと別れたいのよね・・。でもあの人分かったって言っても離婚届にハンコ押してくれないのよ・・。シンヤ押してもらってくれない?』

「わかったよ・・・。」 とは言ったものの、さすがにオレもすぐ親父の所へ行き「書けよ。」なんて簡単に言える訳でもなかった。
オフクロの筆跡だけがある離婚届を預かり、数日が過ぎた時に久々に親父と現場が一緒になったので、昼の一服中に離婚の話を切り出した。




インフルエンザの猛威に怯えながら続く・・・。
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